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歯科医師の(歯への)異常な愛情。あるいは如何にして私は(なるべく)削るのを止めて予防歯科を愛し、トンデモ医療をバカにするようになったか(2015-1008)

JR南武線平間駅徒歩1分。ワコ歯科・矯正歯科クリニック院長の長崎です。

 現在、なるべく削りたくない、なるべく抜きたくないという「予防歯科」を掲げているワコ歯科・矯正歯科クリニックですが、私もかつてはガンガン削り、ガンガン抜き、

ガンガンインプラントを埋入する歯科医師でした。

 それがなぜ?

 削る、抜く、インプラントが悪いわけではありませんし、予防歯科を掲げていない他の歯科医師の先生方が悪いことをしているわけではありません。

 私も未だに削る、抜くからは開放されていません。(インプラントはやめましたが)

 ただ、重視する部分が少しだけ「何故に今のお口の状態になったのか?必要があれば削ったり抜いたりするのは仕方ないとして、今後どーすれば再発のリスクをなるべく低

くできるのか?」という「予防歯科」的な部分に変わった、というだけです。

 少し長い書き込みになりますが、私が歯科医師になった後、何故に現在の「予防歯科」を掲げるようになったかという話をします。

 歯科医師国家試験に合格し、歯科医師として働き始めた時は、それほど深く考えて日々の臨床をしていたわけではありませんでした。

 まあ、フツーに削って、詰めて、抜いて、かぶせものをして、そのうち開業するんだろうなあくらいに考えていました。
 
 歯科医師になって3年目、複数の分院を持つ大手の歯科医院グループに入社した事が、第一の転機でした。
 
 そこでは、削って、詰めて、抜いて、インプラントという一連の流れがマニュアル化されており、いかにお口の中に補綴物(詰め物、かぶせもの)を手際よく詰めていくか

をという流れを徹底して叩きこまれました。

 また、保険の詰め物、かぶせものは精度が悪いので、なるべくならセラミック等の自費で精度の高い材料を使う方が良いという考えもそこで教わりました。
 
 保険の材料は最低限の物であり、その後の持ちや耐久性、見栄えを考えるのであれば自費にすべしという考え方は、2年目まで殆ど保険の詰め物、かぶせものしかやったこ

とのなかった私には驚きでしたし、補綴物の材料や精度に対する考え方の基礎になりました。

 虫歯を詰めればいいんでしょと、順番や効率を考えずに治療を行っていたのですが、この歯科医院グループで順番や効率を教わったことは、大きな財産となりました。

 5年目に、別の歯科医院グループに入社しました。

 そこの代表であるK先生からは

・歯だけを見るのではなく、お口の中全体を見て問題点を把握し、改善するための計画を建てなければならない。その為には、矯正治療も同じ歯科医師ができたほうが望まし

い。

・治療が終了した後は、定期的なメンテナンスで変化を観察し、対応しなければならない。人工物には限界がある。自費で良い治療を行っても、その後すぐダメになってしま

っては患者さんに申し訳ない。

 と、繰り返し聞かされました。

 患者さんに対する姿勢は、このK先生の影響を大きく受けています。

 そして、最も大きな影響を受けたのは、このK先生から「これからは予防の時代だから、この先生のビデオを見といて」と渡された、1本のビデオでした。

 日本における予防歯科の第一人者、熊谷崇先生の講演のビデオでした。

 一言で言うと

「現在の虫歯治療は、虫歯になった原因を見ることなく、削って詰めてを繰り返している。

 例えて言えば、家が燃えているのに、火を消さずに燃えた部分を塞ぐだけのものでしかない。

 まず、火を消してから、その後に燃えた部分を修復し、二度と火が出ないような対策をするのがこれからの歯科治療である」

というものでした。

 虫歯予防という言葉は知っていましたし、自分ではやっているつもりでいましたが、この考え方には衝撃を受けました。

 様々な本を読んだり、講習会に行ってはいましたが、このような「何故に虫歯になるのか」という大本のところを言う先生を見たのは初めてだったからです。

 そして、熊谷先生の著書をアレコレ読む事に、治療よりも予防という考えが強くなってきました。

 それでも、すぐに予防歯科のシフトしたわけではありません。

 K先生に雇用されている雇われ院長という立場上、あまり勝手なことはできませんし、これまでの「削って、詰めて、抜いて、インプラント」という方針を変えることに、

ためらいもありました。

 迷いつつ日々の診療をしていましたが、そんな時に義父(妻のお父さん)から「婿殿、いつまでも雇われでいても仕方ないだろう。開業して一国一城の主になれば、自分の

思い通りにできるぞ」と言われたのです。

 K先生にはとてもお世話になっていますし、一緒にグループを大きくしようと約束した手前、迷いはありましたが、結局「予防歯科という、まだ日本では非常にマイナーな

分野で開業するからには、やはり自分で開業するほかないのではないか?」と考えて、開業に踏み切りました。

 もちろん、自分一人だけの力で開業できたわけではありません。

 義父、妻を始め、多くの方々の協力により、開業することができました。

 開業と前後して、熊谷崇先生が山形市の日吉歯科で行っている予防歯科のコース「オーラルフィジシャン育成セミナー」にも参加し、予防歯科で具体的にどのようなことを

やればいいのか、その際に障害になるものはなにかということをアレコレ学びました。

 こうして削らない私が誕生したのです。(「心が叫びたがってるんだ」より)

 んで、実際にワコ歯科・矯正歯科クリニックで熊谷崇先生のやられていることを丸まるパクって予防歯科を看板に掲げ、やってみたのですが、これがなかなかうまくいきま

せん。

 まず、院長の私自身の「なるべく削らず、抜かず、予防歯科という概念を患者さんにどう伝えるか?伝えたいことはあっても、うまくそれを患者さんに伝えられないもどか

しさ」。

 次に、衛生士さんの「予防歯科っていっても、よくわかんない。これまでに会ってきた先生たちと言ってることが違う!わけわかんない!」

 最後に患者さんの「早く削って、抜いてもらって歯医者通いからおさらばしたいのに、予防歯科に大事なことは~とかわけのわからないことを言われる。めんどい!」

「説教を聞きに来たわけじゃない。早く削って(抜いて)くれりゃいいんだ!」と、患者さんが怒って帰ってしまうこともありました。

 1番大変なことは「予防歯科は儲からない」という事です。

 歯科は基本的に「削って、詰めて、抜いて」という出来高払いです。

(保険制度に関しては言及は控えます。保険医である私が保険制度の悪口をいうことは、親に小遣いをもらっていながら親の職業を批判するようなもんですので。保険制度に

関しての書き込みや質問はスルーします。申し訳ないですが…)

 売上は、ガンガン削って、詰めて、抜いて、インプラントをしていた時期の半分以下になりました。

 これまでだったら削って自費の詰め物、かぶせもの、インプラントをして、一人の治療で100万を超えることも珍しくなかったのに、虫歯を見つけても唾液検査、染め出し

、生活習慣、セルフケア、フッ化物応用の指導のみで帰すのですから、儲かるわけがありません。

 2014年6月に開業して1年ちょい。この方針に賛同して定期的に来院して頂ける患者さんが(ありがたいことに)徐々に増えてはいますが、借金はまだまだ残っていますし、

安泰とは到底言えません。

 サイトや看板に「予防歯科」と書いている歯科医院は数多くありますが、実態を見る限り、熊谷先生の日吉歯科程徹底して予防に取り組んでいる歯科医院は、まだまだ少数

派です。感覚としては、歯科医院100軒に1軒位だと思います。

 同期で予防歯科で開業した先生もいるのですが、もっともっと仲間が欲しいです…。

 なるべく削らず、抜かず、規格化された口腔内写真、デンタルを撮影して患者さんに現在の状態とこれからどうしたらいいかという予防の知識を伝え、可能な範囲で実行してもらうという毎日の診療は、楽しいですよ。

 んで、儲からない予防歯科をやっていると「トンデモ医療の誘惑」に打ち勝つのが大変です。

 予防歯科をやる!と心に決めて看板に掲げ、知人友人親兄弟にも宣言した手前、今更「削って、詰めて、抜いて、インプラント」の方針に戻るわけにも行きません。(再度書きますが、削るからダメとかボッタクリとか言ってるんじゃないですよ。立ち位置が違う、というだけであって、私だって時には削るし、詰めるし、抜きます)

 出来高払いの保険制度が悪い、意識の低い日本人が悪い、歯科大での教育が悪い…「自分がうまくいかない時に、自分のやり方や努力不足を棚に上げて、世間や他の何かに責任を求める」というダメ人間の思考パターンにはまりそうになります。

 そーゆう時に「~は医学会の陰謀」「~をやってないのは日本だけ」「海外では~が主流」という、トンデモ医療の定型句が非常に魅力的に聞こえてきます。

 既存の歯科医療をディスり、我こそが世界で唯一の正当なる予防歯科なり!と声高に叫べば、騙された患者さんが来てくれるんじゃないか、とか。

 虫歯、歯周病は万病の元と不安を煽りまくったらとか、銀歯があると脳に電波を受信するからセラミックに変えようとか、フッ素はレプタリアン(トカゲ人間)の陰謀だからなんとか健康食品を食べて虫歯予防とか…

「これで一発逆転」

という悪魔の囁きにフラフラといきそうになるのです。

 ただ、そーゆう悪魔のささやきにフラフラいきそうになる度に、熊谷崇先生の事を思い出します。

 山形県の酒田市という超ド田舎で予防歯科を根付かせるには、並大抵の苦労ではなかったと聞きます。

 削ることを求める患者さんから罵倒され、歯科医院は閑古鳥が鳴き、スタッフの給料をどうして払おうか悩み…

 そんな状態でも、決してトンデモ医療には手を出さず、科学的なエビデンスのあることのみを行い、未だにエビデンスが明確で無いものは自分で資料を集めてエビデンスを構築したそうです。

 5年、10年、15年、エビデンスに基づいた予防歯科をコツコツと続けていった結果、酒田市の人口の1/10が日吉歯科で予防のためにメンテナンスに通うというところまで到達したのです。

 熊谷先生の粋に達するにはまだまだかかりそうですが、なんとか頑張ります。

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