インプラントを依頼されても、インプラントをやらなかった例(院長 長崎)
JR南武線平間駅徒歩30秒、ワコ歯科・矯正歯科クリニック院長の長崎です。
インプラント専門誌に(抜歯してインプラントを依頼されたが、抜歯せず治療した複数の例)についての考察記事がありました。
>インプラント臨床の一ヒント
>診診連携におけるインプラント専門医が考える抜歯基準あるいはインプラント適応基準の一考
インプラントジャーナル78号より
私はインプラント治療はやらなくなり、必要があれば大学病院等に紹介しているのですが、すごく面白く読めた上に、考えさせられた記事なので紹介します。執筆者の竹島先生の許可済みです。
>昨今多いのが(この状態で抜歯してインプラントが良いのかどうか決めた上で、インプラントが良いならそのまま進めてください)という依頼
>抜歯基準には色々あるが、本来かかりつけ歯科医師と患者の関わりの中で決めるべきことと個人的に考えている.
私もこのような(インプラント専門の先生に相談して決めてください)という依頼をした事があるが、依頼を受ける立場の先生からすれば(治療方針は担当医と患者の間で予め決めてきてほしい。丸投げされても…)と困惑されているということなのでしょうか。反省します。
抜歯してインプラントか、頑張って抜かずに残すのかは(口腔内の状況)だけではなく、それぞれの歯科医師の信念や患者さんの置かれた状況、価値観によって決まります。
難しいところですが…
>局所の処置を依頼されても全顎的な審査を行う重要性を感じている。
強く同意。何故に(局所の処置)に至ったのかの理由は、全体を見なければわからないこともあるからです。
>右上1の歯内療法の度に痛みが出るし、隣の歯も長期持たないので抜歯してインプラントをお願いします(紹介元)
>問診において、ラバーダムの不装着。
うむむ…ラバーダム無しで根治して、予後が悪いから抜歯?それはちょっと…
>どうせ抜歯の覚悟ができているなら、一回、自分なりのしない療法をさせてほしいと説明。患者も了解。
>ラバーダム下で根治、MTAを使用し垂直加圧根充
↓
痛くなくなった!
↓
抜歯する理由がなくなっちゃった…
個人的には、根治(歯の神経の治療)において重要なのは(可能な範囲内での根管内の無菌化)であり、その為には唾液による感染を防ぐラバーダムは必須だと考えています。
そもそもラバーダムをせずに根治をして(痛みが取れないから抜歯)と依頼してくるというのは…いかがなものか…
>患者さんには(長期予後に不安があるのは確かなので、将来的なインプラント治療に向けた、治療計画、費用、治療期間は記憶した上で、それに備えた貯蓄をお願いします)と説明済み。
フォローもバッチリ!素晴らしい。
>予後に不安があるからといって、早期の抜歯からのインプラント治療という風潮は、個人的には好ましくないと考えている
>不安を抱えつつも生きていくのは、超高齢化社会に突入した日本ではおおいにありうる状況なのでは。
同意。多少のリスクがあっても、なるべく歯は抜かない方が良いと思います。
>インプラントが歯に勝るという根拠は一つもない
>筆者はインプラントを信頼しているが、歯を愛している。
同意。インプラントは優れた治療法ですが、自分の歯が残せるのならそっちの方がいいです。
インプラントの専門雑誌に、このような(インプラント治療ではなく、自分の歯を残した症例)の記事が載るというのは素晴らしいことです。
穿った見方をすれば(必ずしも抜かなくていい歯を抜歯してインプラントという例が看過出来ない程多くなった)という事の裏返しなのでしょうか…